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病気や障害を抱えるこどもや家族への関心を高めるWEBメディア

クリニクラウンジャーナル

抜群のライブ感度でこども時間を作り出す! クリニクラン・ぴろ

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“ぴろ”こと和栗裕美さんは、なんと、ご夫婦でクリニクラウン。今回のインタビューでは、“クリニクラウン夫婦”がどのようにして誕生したのか、そして、クリニクラウン・ぴろについて、じっくりお話を伺いました。

2児の母親だからこそわかる
入院中の子供を持つ母親の気持ち

ニコニコ笑顔に大きな瞳が印象的な和栗さんは、実は多才なパフォーマー。
イベントの司会、バルーンパフォーマンス、歌のお姉さん、タップダンスなど、そのパフォーマンスの幅広さには驚かされます。

28歳でUSJの立ち上げオーディションに参加。そこでコメディーアクトレスとしてお芝居をしている時に、同じくコメディーアクターだった旦那さんと知り合って結婚。1人目のお子さんが1歳になる少し前に、クリニクラウンのことを知ったそうです。

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「主人が『こんなのがあるよー』って、クリニクラウンの募集の話を聞いてきて『一緒に受けてみない?』って、オーディションを受けたのが始まりなんです」

合格した1期生は4人。そのうち2人は和栗さんと旦那さんでした。その後、和栗さんは2人目のお子さんを出産し、産休・育休を経てクリニクラウンに復帰。出産・子育てを経て、入院しているこどものお母さんに対する新たな視点が加わったと話します。

「最初は長男1人だけだったので、入院した時の生活は、まぁその子に合わせればいいじゃないですか。でも、下の子が生まれてすぐに入院した時は、上の子はまだ5歳だったので、1人でずっと家に置いておくわけにはいかなくて。『保育園には誰が連れて行こう』『夜はどうしよう』とか。私が一時帰宅する時も、上の子が家にいる時間に合わせられないと、しばらく顔を見ることもできない。そうすると、上の子の方の精神的な心配も出てきて。『ああ、兄弟のいるお母さんにとって、こどもの入院はこんなに大変なんだな』って思ったんです」

みんなに伝えたい『すべてのこどもにこども時間を』

クリニクラウンは、「すべてのこどもにこども時間を」届ける存在。和栗さんは、「こども時間を届ける」ことについて、クリニクラウンになったばかりの頃に出会った男の子を思い出しながら話してくれました。

「まだ2~3歳くらいの男の子で、最初は怖がってなかなか私たちと遊ぼうとしなかったんです。でも、週1回会うことでだんだんだんだん関係性ができてくるじゃないですか。すると、その子が、クリニクラウンが来るのを楽しみにしてくれるようになってきて」

週1回の訪問では、毎回何か特別なことをするわけではなく、「お互いの関わりを楽しむ」という、“ただの関係”が紡がれていったのだそうです。「普通に、本当に普通にこども同士が遊ぶようなこと」をしながら。

「その子はすごく入院生活が長かったんですけど、やっと退院することになって。その時に、お母さんが下さったお手紙に『入院生活っていうのは、こどもにとって決していいことじゃないけれども、悪いことばかりじゃなかった。それはクリニクラウンさんが来てくれたから』みたいな内容が書いてあって。この話をすると、泣いちゃうんですけど。だから、病院にいる中でも、病院じゃないところで過ごしている時と同じ時間を、みんなが送れるといいなっていうのを凄く思っています」

和栗さんは、「こども時間」というのは、特別な、大きなことではなく、「ただその子がその子らしくいられる時間」ではないかと言います。

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「なんかこう、そっと見ているお子さんとかもいて、見ているってことは興味があるってことなんですよね。でも『やる?』って聞くと『イヤ』って言うんです。そこで『あー、ちょっと、手伝って手伝って』ってあわてた感じで言うと一緒にやってくれたりとか。『これとこれ、どっちがいい?』って聞くと『こっち』と答えてくれたり(笑)。中学生・高校生の子でも『いつものクリニクラウン・ぴろで関わっていっても大丈夫だな』っていう子もいれば、『しっかりちゃんとした1人の大人として接してほしいんだな』と思う子もいるので関わるこどもに合わせて話し方やテンションを変えていますね」

どんな子に出会ってもクリニクラウンとして自然に向き合うその臨機応変さに、「ライブ感のあるUSJでの経験が生きているのかも?」と和栗さん。その子がその子らしくいられる「こども時間」は、和栗さんのこどもに対するあたたかな眼差しと研ぎ澄まされたライブ感度によって、目の前のこどもと一緒に自然に作り出されているのです。

クリニクラウンは、自分自身が好きな『ぴろ』になれる空間

今ではすっかりベテランの域に達している和栗さんですが、始めた頃は「クリニクラウンとはなにか?」自分の中でもわからなくて悩んだこともあったそう。でも、今は「クリニクラウンでいるときの方が、結構、自由な感じがする」と言います。

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「普段の生活では、今どういう風に見られているのだろうとか、どんなふうに思われちゃうかなとか、邪魔をしているんですけど、赤い鼻を付けると『これでいいんだ』ってなっちゃうんです。好きなんでしょうね、クリニクラウンでいる自分が。唯一じゃないけど、自分を好きでいてあげることが出来る空間かもしれないです。色々取り払った自分なのかもしれないですね」

目の前にいるクリニクラウンが、本来のその人自身で向き合ってくれていて、しかもプロとしての知識と包容力を持って、素の自分をそのまま受け入れてくれる――入院中のこどもにとって、こんなに安心できる友達は他にいるでしょうか。

待たせることなく病院訪問できる環境を作りたい

インタビューの最後、和栗さんに今後の夢を聞いてみました。

「なかなか先を見る目が無くて、目標が掲げられない人で」と前置きしつつ、和栗さんは「夢というより、課題ですけど」と、語り始めました。

「もっともっと、もっともっと、勉強しなきゃいけないことが多分いっぱいあるんだと思うんですけど、それができてない。それこそ体力作りもそうだし、技術的な事も、勿論、接し方であったりとかも。レベルが落ちていくことは勿論ダメなので、でも、維持するだけじゃなくって、少しずつでもいいから成長していきたいなって。それは思っています」

そして、どこまでも成長をし続けるクリニクラウン・ぴろの“夢”。

「今、訪問に来て欲しいと言って下さる病院がたくさんある中で、待っていただいている病院もあるんです。『来て欲しい』って言って下さる病院に、クリニクラウンがお待たせすることなく行けるようになるといいなーって。そういう環境が整うといいな」

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現在、クリニクラウンは26人。入院中のこどもたちにとって、クリニクラウンは、自分の気持ちをぶつけたり、大笑いしたり、丸ごと自分を受け止めてもらって勇気をもらったりする存在です。 だからこそ、クリニクラウンのトレーニングは厳しく、希望する誰もがなれる訳ではありません。長年の活動を経て、今、クリニクラウンの力を信じる病院は増え、訪問を待っていただくまでになっているのです。

新しいクリニクラウンを仲間として迎え、トレーニングをする立場にもある和栗さんは、今後、この夢にどうやって向かっていくのでしょうか。今回のインタビューを通して、この先、クリニクラウンの仲間が増えることで、すべてのこどもに「こども時間」が届くといいなと思いました。

クリニクラウンに興味が湧いたあなた、オーディションに参加してみませんか?目の前のこどもを笑顔に変えることができる次のクリニクラウンは、あなたかもしれません。

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和栗 裕美
1972年生まれ。京都府出身。
ミュージカルの劇団に所属。退団後はダンスやオペラの舞台、USJでのコメディアクトレスなど様々な分野で活躍。現在は司会やパフォーマーとしての活動の他、タップダンス、腰掛タップダンスの講師を行っている。2006年3月 クリニクラウンの認定を受ける。2015年にタイへの親善訪問やクリニクラウンオランダ財団視察研修へ参加。クリニクラウンとして10年以上全国の小児病棟に訪問し、入院中のこども達へこども時間を届けている。
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<ライタープロフィール>
香川花子
看護学部合格に強いプロ家庭教師。講演家。インドのマザー・テレサ施設でのボランティアをきっかけに家庭教師をしながら29歳で看護師・保健師の資格を取得。2017年、誰もが笑顔になれる社会を目指す日本クリニクラウン協会の理念に共感し、協会ライターとして活動している。